令和4年6月の料金改定に向けて、鍼灸マッサージの療養費検討専門委員会が開催され、議論が進められています。
主な議論の概要
往療料の距離加算の廃止
あはきは往療料の割合が高く、特にマッサージ療養費は施術料よりも往療料の支給額が
多くなっているのが現状です。
また距離加算については医科では平成4年に廃止、訪問看護ではそもそも設けられていません。
医科や訪問看護の現状や、現在の交通事情を踏まえて、過去の改定で距離加算が
4kmまでと4km超のみになり、さらに距離加算が減額されています。
往療料の割合は低下していますが、それでも高い状況にあるため
令和4年の改定では距離加算自体の廃止が検討されています。
往療料の離島や中山間地等の地域に係る加算の創設
往療料の距離加算廃止となると、遠方に往療しても収入が減ることとなります。
結果的に、離島や中山間地等に住む患者は必要な施術が受けられなくなる可能性があります。
このようなことが考えられることから、離島や中山間地等の地域の患者に往療した場合の往療料加算が検討されています。
料金包括化の推進
マッサージ、変形徒手矯正術の施術料は、「施術部位数に応じた報酬」となっており
請求できる最大の部位数を施術するような可能性があります。
また、人体は患部改善のため非麻痺側等の幹部以外への施術も必要となる場合があります。
このようなことから、料金を包括化する提案が施術者から挙げられ議論されています。
第25回(2022年5月6日開催)
~主な議題~
・令和4年改定の基本的な考え方(案)について
令和4年改定の基本的な考え方(案)について
<主な厚生労働省案の一部内容> 〇改定率 +0.13% 1.施術料、初検料、施術報告書交付料の引き上げ ●マッサージ ・温罨法をマッサージと併施した場合 1回につき 125円加算(現行110円加算) ・温罨法と併せて電気光線器具を使用した場合 1回につき 160円加算(現行150円加算) ・施術報告書交付料 480円(現行:460円) ●はり・きゅう ・初検料 1術(はり又はきゅうのいずれか一方)の場合 1,780円(現行:1,770円) ・初検料 2術(はり、きゅう併用)の場合 1,860円(現行:1,850円) ・電療料 電気針、電気温灸器または電気光線器具を使用した場合 1回につき 34円加算(現行:30円加算) ・施術報告書交付料 480円(現行:460円) ※一部負担金の計算方法について、再度周知する 2.支給申請書の記入方法の明確化 支給申請書に施術者等が代理記入する場合の方法について、手書きでもパソコン等での記入でも可能であることを示す事務連絡を発出する。 3.以下は令和6年改定に向けて検討 ●往療料の距離加算の廃止 ●離島や中山間地等の地域に係る加算の創設 ●同一日・同一建物での施術の場合の料金の在り方 ●料金包括化の推進 |
6月の料金改定に向けて具体的な金額が示されるとともに、これまで議論されてきた往療料の距離加算の廃止、離島や中山間地等の地域に係る加算の創設、料金包括化の推進については、令和6年改定に向けてさらに検討を進めることとなりました。
さらに検討を進めることになった内容について
往療料の距離加算の廃止
特にマッサージ療養費において、施術料よりも多くなっている往療料について
過去の料金改定でも見直しが進められてきました。
今回、距離加算の廃止に伴う収入減の対策として、往療料の離島や中山間地等の地域に係る加算の創設が併せて議論されてきました。
ここまででデータや事例などを交えた議論が不足していることから、離島や中山間地等の地域に係る
加算の創設が見送られたことで、往療料の距離加算の廃止も見送られました。
離島や中山間地等の地域に係る加算の創設
前回までの議論では、離島や中山間地等の地域に係る加算の創設が往療料の加算であれば
そもそも往療料の距離加算の廃止と矛盾するのではないか、との指摘により往療料ではない加算などの議論もされました。
結果的に議論の不足により、今回の改定からは見送られました。
料金包括化の推進
もともと施術者代表の希望で議論がスタートしたものの
保険者代表から唐突な議論で時期尚早となり、今回の改定からは見送られました。
第24回(2022年3月24日開催)
~主な議題~
・令和4年改定の基本的な考え方(案)について
令和4年改定の基本的な考え方(案)について
<主な厚生労働省案の一部内容>
1.往療料の距離加算の廃止
2.離島や中山間地等の地域に係る加算の創設
・往療料への加算ではなく、施術料への加算として対象地域は
診療報酬における「医療資源の少ない地域」に施術所がある場合とする。
3.料金包括化の推進
4.その他の見直し
・支給申請書に施術者等が代理記入する場合の「代理記入」の方法はパソコン等でも可能とする。
6月の料金改定に向けて、具体的な金額の議論などは継続審議となっています。
離島や中山間地等の地域に係る加算の創設
前回の議論では、往療料の加算として介護保険の特別地域訪問介護加算等をあげていたものの
保険者からの「往療料の加算廃止に矛盾する」との意見がありました。
これを受けて厚生労働省は往療料への加算ではなく施術料の加算として
対象地域を診療報酬における「医療資源の少ない地域」に施術所がある場合を提案。
これに対して施術者委員は、往療料の加算として前回出された厚生労働省提案の再考を求めました。
料金包括化の推進
マッサージ及び変形徒手矯正術についての料金包括化については、前回と同様に施術者委員は賛成、
保険者委員は議論のためのエビデンス不足から反対しています。
その他の見直し
厚生労働省は、支給申請書に施術者等が代理記入し当該患者から押印を受ける場合、この「代理記入」の方法は、手書きでも、パソコン等での記入でも可能であることを示す事務連絡を発出する方針を示しました。
第23回(2022年2月22日開催)
~主な議題~
・近年のあはき療養費の料金改定について(報告のみ・配布資料参照)
・あはき療養費の現状について(報告のみ・配布資料参照)
・令和4年改定の基本的な考え方(案)
について議論が進められています。
≫配布資料(厚生労働省HP)
令和4年改定の基本的な考え方について(案)
<主な厚生労働省案の一部内容>
1.往療料の距離加算の廃止
・往療料の距離加算をなくし、往療料を1本化にする
2.往療料の離島や中山間地等の地域に係る加算の創設
・距離加算の廃止の影響に配慮し、離島や中山間地等への往療料を加算する
3.料金包括化の推進
・マッサージ及び変形徒手矯正術の施術料を包括化する
これらの内容は、施術料よりも往療料が多いというマッサージの現状を見直すために
かねてより議論されていたものです。
往療料の距離加算の廃止
距離加算は医科では平成4年に廃止、訪問看護ではそもそも設けられていません。
また、現在の交通事情や訪問で行うものの報酬を踏まえて
料金改定の度に段階的に見直されてきました。
現行 | 見直し案 |
往療料 2,300円、4㎞超の場合 2,550円 | 往療料 ●●円 |
施術者側委員、保険者側委員とも事務局案に概ね賛同。
往療料の離島や中山間地等の地域に係る加算の創設
かねてより、距離加算を廃止した際などに離島や中山間地等への往療料を加算することが
検討されていました。
現行 | 見直し案 |
往療料 2,300円、4㎞超の場合 2,550円 | 往療料 ●●円 特別地域加算 ●●円 |
施術者側委員は概ね賛同。
保険者側委員からは以下の意見がありました。
・施術者と患者の距離が離れている場合等に限定すべき。
・往療料の加算では「①往療料の距離加算廃止」と矛盾するので、往療料ではなく別の技術料への加算にすべき。
料金包括化の推進
- マッサージ、変形徒手矯正術は施術部位数に応じた報酬が
施術部位数を多くする方向に影響している可能性があること。 - 患部改善のため、非麻痺側等の幹部以外への施術も必要となる場合があること。
以上から、療養費の適正化、患者負担が変わらない、患部以外にも施術が可能となる
施術部位数によって料金が変わらない「包括料金」(いわゆるマルメ)が提案されました。
現行 | 見直し案 |
(1) マッサージを行った場合1局所につき350円(最大で5部位) ※ 局所の単位(頭から尾頭までの躯幹、右上肢、左上肢、右下肢、左下肢) |
(1) マッサージを行った場合1回につき●●円 |
(2) 温罨法を(1)と併施した場合1回につき110円加算 | (2) 温罨法を(1)と併施した場合1回につき●●円加算 |
(3) 変形徒手矯正術を(1)と併施した場合1肢につき450円加算(最大で4肢) ※ 対象は6大関節: 左右上肢(肩、肘、手関節)、左右下肢(股、膝、足関節) |
(3) 変形徒手矯正術を(1)と併施した場合1回につき●●円加算 |
施術者側委員は概ね賛同していますが、保険者側委員が強く反対しているため、6月の料金改定に向けて次回以降も議論されていく予定です。
その他
現在行っている施術状況の分析や、検討専門委員会での議論を経たうえで引き続き検討としています。
- 同一日・同一建物での施術の場合の料金のあり方
- 往療内訳表のあり方
- 往療料の見直しや料金包括化の推進を行ったうえで、訪問施術制度(施術料と往療料の包括化)の導入